この記事は音MAD Advent Calendar 2022の19日目の記事です。遅刻しました。
みんなが根を詰めた記事しか書いてなくてめっちゃ恐縮!深い話も考え方みたいな話もできないので、すきなプラグインについて書きます。
概要 tl; dr
- 原曲のうち素材の音域と被っている部分を抑制したりするよね
- ↑それsoothe2で簡単にできますよ
困ること
音MADで使用する曲の大半は世に向けて発売されるタイミングでマスタリングされます。おおよその場合は低音域から高音域までまんべんなく埋まっている状態を目標としてマスタリングされるので、音MADの音声制作時にそのまま素材を置いてしまうと帯域がぶつかってしまい、聞きづらいミックスになってしまいます。特に、音MADにおけるセリフやリードあたりの一番聞かせたいような素材における特徴的な音域は中域であることが多いため、音MADではよくぶつかる問題であると言えそうです。
これまでの対応手
これに対する対応としてよく挙げられるのは、EQで原曲の中音域帯をあらかじめ削ることです。
事前に削っておくことで、素材が活躍する音域を開けることができて音MADとして聞かせやすい状態にすることができる、という考え方です。ただ、当たり前ですが素材が占める音域に対してどうしても広めに削ってしまうものだと思います。例えばある素材のレゾナンスは400hz, 420hz, 500hzあたりが目立つけど、別の素材はもっと別の部分にもレゾナンスが存在するので、あらかじめ原曲の300hz ~ 800hzまでを広く削っておく、など。これは楽である一方、原曲を必要以上に小さくしてしまう要因に繋がります。
また、対策としてEQではなくダイナミックEQで削ることも考えられます。ダイナミックEQは設定した帯域の音量が一定以上となった場合に音量を上げ/下げることができるエフェクトです。これをサイドチェインと共に使うことで素材が鳴っているタイミングだけ下げることはできますが、素材ごとに細かく帯域を設定するのは骨が折れる作業になりかねません。
そこでsoothe2を使います!!
soothe2とは?
『SOOTHE 2』は、視覚的に分かりやすく、イコライザー感覚で使用できるダイナミックレゾナンスサプレッサー&ディエッサーです。
そもそもレゾナンスサプレッサー/ディエッサーとは、レゾナンスになっている部分(基音に対して共振、共鳴している部分)を小さくしてくれるオーディオエフェクトです。本来は必要以上にキンキン鳴っている高音域などに対して効果を期待するものだったりします。誤解を恐れずに書くと、今回は単純になんらかの素材をスペクトラムアナライザーで見た時に山のように尖っている部分のみを小さくしてくれるものだと捉えてくれると良さそうです。特にディエッサーは人間が喋っている素材にありがちな「サシスセソ」の音だけ強くなってしまう現象に対して有効です*1。
soothe2はふつうのレゾナンスサプレッサーとは違い、作用する範囲とその強さをGUI上で弄れる(さながらイコライザーのように……)ので直感的で・簡単で素晴らしい!というのが趣旨のプラグインです。
素材にエフェクト挿しまくってキンキンになってしまった時にsoothe2で簡単かついい感じに抑えることができる、という使い方もできるのですが、今回はサイドチェインの機能を使います。
素晴らしいサイドチェインモード
原曲のトラックに対してsoothe2を挿入し、素材が鳴っているトラックをサイドチェインのソースにします。soothe2上でsidechainモードをオンにして再生すると……
(↑これ動画です 1ループ目: バイパス状態 2ループ目: MAX 3ループ目: いい感じの値に調整 4ループ目: バイパス状態)
原曲のうち、ちょうど素材で鳴らしている音域のみが削られるようになります!これは便利!!!
しかもEQで広く削る例と比べると、その時に素材が鳴らしている帯域のみを削ることになるため、原曲は必要最小限の欠損で済むわけです(上に貼った動画の3ループ目は原曲への変化が少ないままにシャミ子の声の通りやすさも良くなってると思います。伝わるといいな~)。これが最小限の労力で得られるのでとても素晴らしい!!!
実際にこの用途で使う場合には、attackを最速にしたり、sharpnessをちょっと大きくしたり、depthを用途に応じて強めたりする必要がありそうです。ここでは詳しい説明はしませんが、GUIがかなり親切で分かりやすいので触るだけで理解できるかと思います。自分は以下のような設定にした上で、ソースとなる素材に応じて減衰させる帯域を変えたりしています。
すごいぞ
上の例では原曲 + 素材の例を出しましたが、他にも利用用途は挙げられます。先程も挙げましたが、soothe2単体をそのまま素材のトラックに挿して聞きやすくできます。
- 耳障りに鳴っている高音鳴っている部分を削る
- 中音域をいい感じに削る
- 純粋にディエッサーとして使う
他にも、マスターに挿して全体のミックスを整える*2、原曲を耳コピしたパートにsoothe2を掛けてセリフパートをサイドチェインのソースにする(耳コピパートを減衰させてセリフを目立たせる)、などは有効な使い方だと思います。また、プリセット一覧を見ると用途ごとにフォルダ分け/名前が付いていたりするので、好きなものを選んでそのまま使う、というのもアリだと思います。
珍しいことにsoothe2のプラグイン自体にチュートリアルが実装されており、初回起動時や ?
メニューの tutorials
選択時に、実際にsoothe2を触りながら使い方を覚えることができます。各種説明もsoothe2のGUI上で教えてくれるのでお手軽。体系的に学べるのでとても覚えやすいと思います。
価格
通常時の価格で28,900円です……音MADにおけるmixの重要性が別にそこまで強くないことも考えると、尚更に人に勧めづらい……
たまにセールもやっているみたいです(既に終わってしまいましたが)。前回は30%OFFの20,000円になっていました。来年のブラックフライデーとかでいかがでしょうか?
また、demo版として20日の間フル機能が使えます。購入前の検討などに是非。
まとめ
音MADの音声制作にも向いている(と思っている)プラグイン soothe2 の紹介でした。トラック同士のミキシングは勿論、マスタートラックでのミックスでも活躍するプラグインなので、是非とも使ってみてください。
公式サイトから購入する場合はこちら↓ oeksound.com
日本の代理店 SONICWIRE からの購入はこちら↓ sonicwire.com